全世界:狂犬病~もし咬まれたら

2012年07月25日

狂犬病

 

1.狂犬病の発生状況

 狂犬病は日本,英国,オーストラリア,ニュージーランドなどの一部の国を除いて全世界に分布しており,ほとんどの国で感染する可能性があります。
毎年,世界中で55,000人以上の人が狂犬病感染で死亡しているといわれています。特にアジアを中心とした地域で発生が多く確認されていますが,北米,欧州の一部地域でも感染のおそれがあります。
世界各国における狂犬病の発生状況としては,狂犬病による死亡例が最も多いのはインドで約20,000人(2008年)であり,また,パキスタンでは2,490人(2006年),中国では2,466人(2008年)の感染死亡例が発生しています。このほか,インドネシアでも,2008年にバリ州において初めての感染事例が確認されて以降,2011年までに,100人以上の感染・死亡,が確認されています。

日本では狂犬病が撲滅されているため,その危険性を忘れがちですが,2006年11月に,フィリピンで犬に咬まれた日本人が帰国後に発症,死亡する事例が2例報告されました。
世界各国では現在も感染者が存在する病気なので,海外に渡航,滞在される方は以下の点に御留意ください。

2.狂犬病について

(1)感染源
狂犬病は,日本では撲滅された感染症ですが,世界中で感染者が出ています。狂「犬」病という名称ですが,犬に限らず,猫やイタチ等他の哺乳動物(北米ではアライグマ,スカンク,コウモリ,欧州ではキツネ,アフリカではジャッカルやマングース,その他牛や馬など)からも感染することがあります。狂犬病に感染した犬等の唾液中にウイルスが存在しますので,主に動物に咬まれることで,その傷口からウイルスが体内に侵入します。
(2)症状
人の場合,潜伏期間は一般に1か月~3か月で,長い場合は1年~2年後に発症した事例もあります。発症した場合はほぼ100%死亡します。症状は発熱,頭痛,嘔吐などに始まり,次いで筋肉の緊張,けいれん,幻覚が現れます。水を飲むとのどがけいれんをおこし(恐水症),冷たい風でも同様にけいれんをおこします(恐風症)。犬の遠吠えのようなうなり声をあげ,よだれを大量に流し,昏睡,呼吸麻痺が起き,死に至ります。
(3)予防方法
(イ)動物にむやみに手を出さない。
日本人は犬や猫を見ると無防備に手を出したり,撫でたり,手から直接餌を与えたりしますが,むやみに犬や猫,その他の動物に手を出さないようにしてください。他人のペットであっても要注意です。
(ロ)具合の悪そうな動物には近づかない。
狂犬病の犬は,多量のよだれを垂らし,物に咬みつく,無意味にうろうろするなど独特の行動をします。
(ハ)予防接種(暴露前接種)
狂犬病ワクチンは国内の医療機関で接種することが可能ですが,現在,狂犬病ワクチンの在庫が減少している状況に鑑み,狂犬病の流行地域からの帰国者で犬等に咬まれた方,狂犬病の流行地域への渡航予定者で犬等に接触する可能性が高い方に優先的に接種されています。渡航,滞在先で動物を対象に活動する場合や付近に医療機関がない地域に滞在する場合には,検疫所ホームページに掲載されている以下の予防接種可能な医療機関に御相談ください。
http://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination05.html
狂犬病ワクチンを接種する場合は,初回接種後,30日目,6~12か月後の計3回接種します。
(4)万一動物等に咬まれた場合の対策
狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれてしまった場合,直ちに十分に石けんを使って水洗いをします(傷口を口で吸い出したりしない)。その後,すぐに医療機関で傷口を治療し,ワクチン接種をします。発病前であれば,ワクチンの接種は効果があると考えられていますので,必ず接種してください(破傷風トキソイドを未接種の方は狂犬病ワクチンの接種とともに,破傷風トキソイドの接種も必ず受けてください)。事前に狂犬病の予防接種を受けている場合でも,狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれた場合は治療を目的としたワクチン追加接種が必要となりますので,必ず医療機関で受診してください。
また,現地医療機関での受診の有無にかかわらず,帰国時に検疫所(健康相談室)に御相談ください。

 

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